介護を必要とされる方は、なかなかご自分ではお口のケアができないもの。しかし、ケアを怠ると身体の健康にも悪影響を起こしかねません。口腔ケアについては、訪問歯科診療で対応できることがあります。要介護の方のお世話をなさっている介護施設やご家族の方で、口腔ケアをご希望の方は当院にご相談ください。
口腔ケアには大きく分けて2種類あります。それは「機能的口腔ケア」と「器質的口腔ケア」です。
機能的口腔ケア |
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話す、食べる、笑う、表情を作る、呼吸をするなどの口腔機能を維持・増進させるためのケアです。口腔機能のリハビリテーションの一環であり、歯科疾患の予防だけでなく、認知症の進行予防としても注目されています。舌を動かしたり、口のまわりの筋肉をトレーニングしたりすることで、摂食嚥下(せっしょくえんげ)障害も予防します。 |
ケア内容 |
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器質的口腔ケア | ||
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このケアの目的の一つは、日常のブラッシングや歯のクリーニングといった一般的な虫歯や歯周病の予防です。また口腔内ケアで虫歯菌や歯周病菌を減らすことで、誤嚥性(ごえんせい)肺炎などの全身疾患リスクを減らすことも大切な要素です。 | ||
ケア内容 | ||
歯がある場合 | 義歯がある場合 | 歯がない場合 |
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咀嚼機能や摂食・嚥下障害の改善・回復を促します。口腔内機能の低下を予防し、その維持に役立てます。
虫歯や歯周病などの歯科疾患の予防のほか、カンジダ性口内炎などの口腔感染症を予防します。また、口臭の予防にもつなげます。
誤嚥性肺炎やそのほかの全身感染症などの原因となる口腔内細菌の数を減少させます。唾液分泌が促進されて免疫力の向上にもつながるほか、認知症の進行を抑制するとの報告もあります。
言葉を発する機能の維持・回復により、コミュニケーションの機能を維持・回復します。
経口摂食(お口からの食事)ができるようになることで、低栄養や脱水を防ぎ、体力の回復や意欲の向上、全身状態の改善が期待できます。食べる意欲が出ることで味覚が改善したり、生活のリズムが整ったりすることによって、QOLの向上にもつながります。
このようなことが要介護の方に見受けられたら、摂食嚥下障害があるかもしれません。摂食・嚥下とは飲食物を口から飲み込んで、のど、食道、そして胃へと送り込むこと。これがうまくいかなくなることを「摂食嚥下障害」と言います。
摂食嚥下障害の原因には大きく分けて3つあります。それは心因的原因(神経性食欲不振、うつ病など)によるものと、機能的原因(脳腫瘍、パーキンソン病など)によるもの、そして器質的原因(口内炎、扁桃炎など)によるものです。器質的原因の中には歯科診療で治療、改善できるものもあります。気になる症状があるようでしたら、お気軽にご相談ください。
摂食嚥下障害がおよぼす影響
- 脱水状態
- 栄養不足
- 誤嚥性肺炎
- 窒息 など
摂食嚥下障害により水や食べ物などが誤嚥によって肺に入ってしまい、細菌が繁殖して炎症が引き起こされたことによる肺炎が、誤嚥性肺炎です。ご高齢の方にとって誤嚥は肺炎のほか呼吸器疾患にもつながりやすく、命にもかかわる病気であるため、注意が必要になります。
ただ誤嚥性肺炎の診断は、内科や呼吸器専門の医師でないとなかなか診断できません。またご高齢者の場合、症状がわかりにくいことも多いので、下記のようなことが気になりましたら、できるだけ早く専門医にご相談ください。
典型的な症状
- 激しく咳こむ
- 苦しそうに呼吸する
- 濃い痰が増えた
- 高熱が出る
そのほかの注意すべき症状
- 元気がない
- ボーっとしていることが多くなった
- 食事時間が長くなった
- 口の中の食べ物をなかなか飲み込まない
- 食後に疲れてぐったりする
- 失禁するようになった